M1 IN |
TK31(エルピス) |
私の名は・・いや・・ネオ・アルカディア都市管理局の一構成員であるこの私に名などありません。
ただ名前というものが単なる固体認識の手段であるならば、形式番号、TK31(ティーケースリーワン)。
この数字の羅列が、私の名ということになるのでしょう。
人間にとっての理想都市を恒常的に維持するためには、我々のような大量の量産型レプリロイドと、本当の名前というものを持った、一群の特権階級レプリロイドからなる、厳格な管理体制が必要となります。
安らかな心の平和に満たされた人間社会と数字に置き換えられ高度に機能化されたレプリロイド社会。
私はこの崇高なまでに美しく管理されたネオ・アルカディアという都市を、システムを愛していました。
・・ふふふふふふふ。
そう、あの言葉を、己の名として刻み込んだその瞬間までは! |
M1 OUT |
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―――外 |
SE ヘリの音
SE 海の潮騒
作業員の声があちこちで響いている。 |
TK31の同僚A |
見ろ。ハルピュイアだ・・。 |
TK31の同僚B |
今回の調査に同行するってのは本当だったのか。 |
TK31の同僚C |
管理局のやつらやハンターまで含めたら、かなりの規模になるな。
よほど物騒なもんか・・かなりのお宝が眠ってるってこった。 |
TK31 |
君たち・・その辺でおしゃべりはやめないか。 |
作業員の声に混じって、命令を出しているハルピュイアの声が聞こえてくる。 |
ハルピュイア |
・・・・食料班を急がせろ。よいか。お前達はただここにあるデータを集めるだけだ。単独行動を避け、何かあった場合は同行したハンターに報告しろ。 |
TK31 |
ここまで原型を留めた旧世代の海洋情報都市が発見されることは非常に珍しいのです。
エックス様の行政を学術的側面から支えるハルピュイア様が、現地に赴き指導されるのは当然のこと。
むしろ光栄に思わなければ・・。ふふふふふふ・・。 |
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―――海洋情報都市内部 |
SE エレベーターの降りる音
M2 IN |
調査員A |
電源が生きてる・・ここは? |
TK31 |
巨大な図書館のようですね。 |
調査員B |
うわあ・・。すごい扉の数だ。一体いくつの部屋が・・。 |
SE 足音 歩き出すTK31 |
調査員B |
・・お、おい! |
SE 足音 歩いていくTK31 |
TK31 |
あのときの私は・・どうかしていたとしか思えません。
まるで何かに導かれるように最深部のデータルームへと迷い込み、暗闇の中に封印された歴史の断片という禁断の果実を口にしてしまうことになるとは・・。
望まない現実が、目の前をふさぎ、覆い尽くすことになろうとは・・。 |
M2 OUT |
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―――データルーム |
TK31 |
このデータルームは一体・・? |
SE 起動音 |
TK31 |
あっ・・・ああっ!こ、これは・・・・。
世界を破滅に導く強大な力・・ダークエルフ。
超一級戦犯ドクター・バイル。
妖精戦争末期・・レプリロイドの完全支配オペレーション。
・・これはエックス様!なんだ・・何と戦っている・・。オメガ・・?
何なんだ・・。何なんだ、この記録は・・!
こんなもの、見たことも聞いたこともないぞ!
そういえば・・エリア7(セブン)の研究施設には、大戦時のベビーエルフが保管されていると・・。 |
SE ピッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ・・ サイレンが鳴り始める。 |
TK31 |
はっ。どっ、どうした・・!オーバーフローか!
歴史が巻き戻っていく・・。い、イレギュラー戦争・・シグマアンチボディプログラム・・マザーエルフ・・。
ひ、光が・・世界を救う・・。希望の誕生・・。
これは・・プロジェクト・エルピス! |
ハルピュイア |
貴様!そこで何をしている? |
SE 足音 ハルピュイアが近づいてくる。 |
TK31 |
はっ・・! |
ハルピュイア |
どうした・・。何を震えている?
言ったはずだな・・集めるだけでいいと。 |
SE ボタンを押す音 サイレンが鳴り止む。 |
ハルピュイア |
お前のような者が浅ましい好奇心に従い、興味をもったところで・・無意味なことはわかっているはずだ。
いいか。今見たものはすべて忘れろ。形式番号・・TK31。 |