― Promised Land 後編 ―

〜[ゼロとシエル&ハルピュイアとエックス] ロックマンゼロサイドストーリー10〜



『ゼロ、大丈夫?』
 ゼロが目を開けると、心配そうに顔を覗き込んでいるサイバーエルフ――シャリテの姿があった。
『よかったよおおーーー!』
 シャリテはゼロの顔にがばっと抱きついてくる。
「…離れろ。何も見えん」
『…あ、ごめーん』
 シャリテはぱっと離れると、てへっと舌を出す。
 ゼロは上半身だけ起き上がる。目の前に垂れ下がっている何かを無意識に手で払う。
「ここは?」
 辺りを見回すと、砂漠のようにも荒野のようにも思える、どこかの荒地にいた。
 荒涼とした風の音だけが聞こえる。
『私もわかんないの。ラグナロクが爆発して、それに巻き込まれたことまでは憶えてるんだけど…。気がついたら、ここに倒れてたの』
 ゼロは思案する。

――“エックス”。お前がオレを助けたのか。

『ゼロ、なんか変わったね〜』
 シャリテは口に指を当てて、じーっとゼロを見る。
 そのとき強い風が吹いた。風に煽られて、目の前に何かがまた垂れ下がってくる。
 ゼロはそれを乱暴に払いのけると、頭に手をやる。
「?」
 ゼロは違和感を感じた。いつものようにメットの冷たい感覚ではない、何かわしゃわしゃした感覚。
 再び目の前に落ちてきたそれを見たとき、ゼロはようやくその正体が髪の毛、金色の長い髪だとわかった。
 よく触って確かめると、人間のようにしっかりと頭から生えている本物の髪の毛だった。
 ゼロは表情に出さないまでもかなり驚く。
 何故なら、今までの髪は、あくまで頭部パーツの一部としての部品でしかなかったのだから。
『ゼロの頭、そこに落ちてる』
 シャリテが指差す方を見ると、今までずっとゼロの頭部を覆っていたメットの残骸が転がっている。
 ゼロは慎重に自分の体を調べてみた。
 バイルとの戦いで負ったはずの傷も見当たらない。
 そして、一つの事実を確認した。

『君は“ゼロ”という名の一人の人間なのだから……』

 先ほど聞こえた“エックス”の言葉の意味を。
「“エックス”……」
『?』
 シャリテはわけがわからないといった様子で首をかしげた。
 ゼロは立ち上がると、空を見上げる。

――“エックス”。
――オメガのときといい、結局、オレは最後までお前に面倒をかけちまったのかもしれんな。

『ゼロ! 早く帰ろうよ〜〜!』
 ゼロの感傷を知ってか知らずか、シャリテはひらひらと飛び回りながら、呑気に催促する。
 ゼロはふうとため息をつくと、歩き出した。そんなゼロの周りをひらひらしながらシャリテが飛んでいく。
 
――まず向かう場所はあそこだ。
――そう、約束のあの場所へ。




 ゼロがラグナロクのエリア・ゼロへの落下を阻止してから、二年の月日が過ぎ、人間の集落はあの頃から、すっかり様変わりしていた。
 ネオ・アルカディア崩壊時の惨事も次第に人々の記憶から薄れてゆき、ベビーブームの真っ只中となった今、誰もが嬉しくも多忙な日々を送っている。
「シエルさんは?」
 集落に新しく建てられたシエルの家を訪ねたネージュをセルヴォが出迎えた。
「すまんな。シエルなら今出かけている」
「また、“約束の場所”に?」
「ああ」
「そう…」
 ネージュはふっと笑う。
「じゃあ、これ作ったから、よかったら食べてって」
 ネージュは持ってきた包みをテーブルに置いた。
「もうすぐ日が暮れるわね。いつもこんな時間まであそこに?」
「ああ。ゼロとシエルの思い出の場所だからな」
 セルヴォは感慨深げに目を細める。
「『ゼロはきっと帰って来てくれる』……シエルさんの口癖だったわね。シエルさんって、ゼロの事を話すときはすごくいい表情するのよね」
 ネージュの言葉にセルヴォは頷く。
「じゃあ、お願いね。私も夕飯の準備をしなくちゃ」
 そう言って、ネージュはシエルの家を後にした。

――ゼロ、どうか早く帰ってきてあげて。シエルさんはずっとあなたのことを待ってる。

 ネージュは歩きながら、心の中でそうゼロに告げていた。




 シエルはじっと岩に腰掛けて、沈みゆく夕陽を見送っていた。
 あれから二年の月日が過ぎ、シエルはぐんと背も伸び、顔つきも歳相応の雰囲気を漂わせていた。だが変わらないのは、『ゼロはきっと帰って来てくれる』というゼロへの強い想いだった。
 振り返れば、いつでもそこにいてくれたゼロ。
 いつのまにかゼロは自分にとって欠かせない存在になっていた。

――ゼロが隣にいない事がこんなに寂しいなんて…。

 シエルは自分の中にぽっかりと穴が開いた気分だった。
 自分を気遣うセルヴォたちに悪いと思い、できるだけ研究に没頭したり、近所の子供の遊び相手やお守りをしてやったりすることで、気を紛らわせ、明るく振舞おうとした。だが、シエルはどんなときでも、常に頭の片隅でゼロのことを考えていた。それだけ、ゼロの存在はシエルの中で大きなものになっていたのだ。
 一人になると、とたんに寂しくなり、心の中がどうしようもない切なさで溢れてくる。
 しかし、シエルは暇があると、いつもここにやって来ていた。
 ここは、自分とゼロを繋ぐ大切な思い出の場所。
 また、ここに来るという約束――ゼロが何もなかったかのように、ここにやって来てくれるのではないかと、心の中で願っていたから。
「ゼロ……」
 シエルは溢れてくる涙を手で拭うと、目の前の景色を見つめた。
 相変わらず自然の風景は素晴らしく、シエルに感動を与えてくれる。
 だが、シエルにとって、ゼロと一緒に見たあの日の風景こそが、自分の中で一番輝いていた。
 シエルは両手を空にかざしてみる。
 いつのまにかおまじないのようになっていた。
 ゼロに自分の想いが届きますように。
 ゼロが戻ってきますように。
 泣き出す自分を元気づけるおまじない。
「………ゼロ」
 シエルが涙声でそう呟いたとき。
『シエルお姉ちゃん!』
「!?」
 シエルが声のした方を振り向くと同時に、サイバーエルフが勢いよく飛んできて、シエルの顔に思い切りぶつかった。
『元気だったーーー? 会いたかったよーーーー!』
 シャリテである。そのまま両手を広げてシエルの顔にがばっとしがみつく。
「シャリテ?」
 シエルはいきなりのことに、どうしたらいいかわからず戸惑った。
 シャリテはシエルの顔に張り付いて、おいおいと泣いている。
「み、見えない…んだけど」
 シエルはとりあえず感想を述べてみる。
『…あ。またやっちゃった』
 ようやくシエルの様子に気づいたシャリテは、ぱっと離れると舌を出してへへっと笑う。
「無事だったの!?」
 シャリテはこくんと頷くと、にこにこしながら、岩棚と反対の森の方を指差す。
「あ……」
 シャリテが指差した先には、金髪の髪をなびかせた一人の青年が立っていた。
 集落では見かけない青年だ。
 だが、青年の顔つきや格好、身に付けているものに、シエルは見覚えがあった。

――ゼロ!?

 シエルは声を出すよりも早く走り出していた。

――早く駆けさせて! ゼロに早く触れさせて!

 よろめきそうになってもシエルは必死に走り続ける。

――早くゼロに触れて、夢ではないことを確かめたい!

 そんなシエルをゼロは待ち続ける。
 シエルは思い切りゼロに抱きついた。その反動でゼロは一瞬よろめくが、倒れることなくシエルを抱きとめた。シエルはゼロの首に腕を回して肩口に顔を埋める。

――もう離さない。

 ぎゅっとゼロを抱きしめる腕に力がこもる。
 ゼロはそんなシエルを抱きしめ返す。もちろん力の差というものがあるので優しく。
「…っ、ゼロ…ゼロ……!」
 シエルは嗚咽混じりの声でゼロの名を呼び続ける。
「二年も……二年も待たせるなんて………!」
 シエルが涙でくしゃくしゃになった顔でゼロを見上げた。
「二年?」
 ゼロは怪訝そうな顔をする。
「オレは、つい最近のことかと思ってたが…」
「あなたがいなくなってから、もう二年も過ぎたのよ」
「そう言われてみれば……、シエル、お前背が高くなってるな」
「……もう。今になって気づいたの?」
 相変わらずこういったことに鈍感なゼロに、シエルは泣き顔のまま苦笑する。
 “エックス”と話してから、意識を取り戻すまでの時間。
 それは短く思えて、実際はかなりの時間だったのだと、ゼロは考えた。
 “エックス”がゼロの魂を癒し、そして、今の姿に変えるのに、二年という時間がかかってしまったのだろう。
 それに、案外そそっかしい“エックス”のことだから、ゼロにそのことを告げるのを忘れていたのかもしれない。
 そう思うとゼロはおかしくなり、ふっと笑った。
「ゼロ…あなた……」
 ようやく落ち着きを取り戻したシエルは、一旦ゼロから体を離すと、ゼロの全身をまじまじと見た。
 そして、そっとゼロの頬に触れてみる。
 暖かい。
 自分と同じ人間の肌の温もりを感じた。
 シエルはそのままゼロの頬を優しく撫でる。
 次に、シエルは自分の頬をゼロの胸に当ててみた。
 感じる。
 自分と同じ血の流れ、心臓の鼓動を。
 間違いない。
 今のゼロは人間だった。
 何故だかわからないが、まぎれもない事実だ。
 シエルはゼロを見上げる。
「ああ」
 シエルの言いたいことを察したゼロは頷いた。
「“エックス”がオレを守ってくれたらしい」
「“エックス”が?」
「ああ。“エックス”がオレをお前の元に導いてくれたんだ」
「ありがとう…“エックス”……」
 シエルは空を仰ぎ、目の前にいない“エックス”に感謝の気持ちを述べた。
 きっと“エックス”も遠くから二人を見守っていてくれてることだろう。
「ゼロ…。ここに来るって約束…守ってくれたのね」
「お前もな」
 ゼロはシエルの頭にぽんと手を乗せる。
「ええ…」
 シエルが再び背中に手を回してしがみついてくる。
 ゼロは目の前のシエルの存在に、かつて“エックス”に感じていた以上の安らぎと愛情を感じていた。
「オレはお前が好きだ」
 シエルを抱きしめながらゼロは告白する。
「ゼロ」
 シエルは驚きと困惑と照れた表情でゼロを見上げた。
 ゼロの掌がシエルの顔を包み込む。
 その心地よさにシエルは目を細めると、照れくさそうに微笑んだ。
「私もゼロのこと好きよ…愛してる」
 シエルはゼロの目をまっすぐに見つめて言った。
「ずっとずっと好きだった……。ずっとこの気持ちを伝えたくて、二年間あなたのことを待っていた……!」
 クールで、何を考えてるかわからなくて、がさつで、ぶっきらぼうだけど、優しくて、強くて……そんなゼロをシエルはずっと慕い、愛していた。
 ゼロから想いを告げられて、シエルは泣きたいほどに嬉しかった。
 その想いに追い討ちをかけるように、ゼロはシエルに優しくキスをした。
 静かな二人だけの時間が流れる。
 そんな二人をシャリテは静かに見守っていた。
 ゼロはシエルから顔を離すと、優しい笑みを浮かべて見つめた。
 ゼロの優しい眼差しは自分にだけ向けられているのだと思うと、シエルは嬉しさのあまりまたキスしたくなったが、その気持ちをとりあえず抑える。ゼロのめったに見ることができない優しい眼差しを瞳に焼き付けようと、シエルは照れ笑いをしながら、その顔をしっかりと見つめ返す。
 ゼロはシエルを見つめながら、改めて自分の気持ちが誰に向かっていたのかを再確認していた。
 今までシエルの存在を意識することはあったが、それは“エックス”を連想する場合に限られていた。
 平和を誰よりも愛し、皆を守るため戦わなければならない自分に悩み、平和への道を模索しながら必死に頑張るシエルの姿に、“エックス”を感じていたのだ。
 だが、今自分が好きなのはシエルだ。
 自分が今一番大切にしたいのもシエル。
 ゼロの心にシエルは戻り、“エックス”は思い出の中に眠った。
 やがて陽が沈み、辺りは夜の帳に包まれる。
 夜の帳の中、ゼロとシエルはしばらくの間、そのまま見つめ合っていた。
『ねえ〜』
 横から聞こえた声に、二人ははっとして、声の聞こえた方を見る。
「シャリテ……」
『いちゃいちゃしてないでもう帰ろうよ〜。おなか空いた〜〜』
 シャリテはぶーっと口を尖らせる。
「あ……そ、そうね! そろそろ帰りましょうか」
 シエルはははっと笑いながら、照れ隠しで手をひらひらと意味もなく振ってみせた。
「さて…これからが大変だな。オレは人間としてはまるっきりゼロだ」
 不意にゼロが現実的な心配を口にした。
「ふふっ、そうね。でもいいじゃない。誰もがみんな、すべてはゼロから始まるのよ」
 シエルの言葉を聞いてゼロはふっと笑う。
「…そうだな。ゼロから始めるのも悪くはない」
「大丈夫。私が人間というものをしっかり教えてあげるから! 今度は私があなたを守ってあげる」
 シエルはゼロの両肩に手を乗せてぽんぽんと叩くと、明るく笑った。
「あ、そうだ」
 シエルは思い出したようにぽんと手を叩く。そして、爪先立ちをしてゼロの頬に素早くキスする。
「お帰り」
 シエルはこれ以上ないくらいの笑顔でゼロに言った。




 ゼロとシエルの再会を、“エックス”は遠くから見守っていた。
 傍にはハルピュイアが控えている。
 ハルピュイアは心配そうな表情を浮かべて、“エックス”をじっと見つめていた。
 少し離れた岩場で、ファーブニル、レヴィアタン、ファントムの三人が、どうしたらいいかわからずに、成り行きをぼんやりと見守っていた。
「“エックス”様………あなたはあれでよろしかったのですか?」
 ハルピュイアは遠慮がちに口を開く。
 ゼロをあのままサイバー空間に留めておくこともできたはずだ。
 ゼロとまた一緒にいたい。
 それが“エックス”の望みだったのではないか。
 だが一方で、“エックス”がこうしたことに安堵している自分の気持ちを自覚し、ハルピュイアは心の葛藤を感じていた。
 ゼロがサイバー空間にいるようになれば、もしかしたら、“エックス”の心はまたゼロのところへ戻ってしまうのではないかと不安に思ったから。
『……ゼロが望んだことだから』
 “エックス”は俯いて瞳を閉じると、静かに答えた。
 ハルピュイアには、まるで“エックス”が自分に言い聞かせているように見えた。
『それに、これで英雄と呼ぶものはなくなった。今のボクはただのサイバーエルフ。そして、ネオ・アルカディアはもう過去の国。みんなを縛っていたものはなくなり、英雄という名の幻想に惑わされることもなく、人もレプリロイドも自分自身の意志で生きていける』
「そうですね……」
 そう言いながらも、ハルピュイアは“エックス”を痛ましそうに見ている。
『ふふっ、大丈夫だよ。だって、ゼロが幸せになれたんだから』
 ハルピュイアの気持ちを察して、“エックス”は穏やかに微笑んだ。
『それに…』
 “エックス”はハルピュイアをじっと見つめる。
『君がいる』
 ハルピュイアはその言葉を聞いて、感極まったように微笑むと、大きく頷く。
「はい」
 ハルピュイアの返答に、“エックス”は嬉しそうな顔をしてこくんと頷き返す。その瞳には、今まで見せたことのないような安らぎの光が浮かんでいる。心からの本当の笑顔だった。
「たとえ、住むべき世界が違おうとも、オレはいつもあなたの心にいます」
『ありがとう』
 “エックス”はもう一度振り返り、遠くを見る。
 寄り添いながら集落への帰途につくゼロとシエルの後ろ姿が見えた。

――信じあうこと。
――それが君との遠い約束。
――忘れない……君と一緒にいた時間(とき)。
――いつまでも、この胸の中で輝いてボクを勇気付けてくれる……そんな素晴らしい思い出をありがとう。
――だから、今は微笑んで言えるよ。
――さよなら。

 もう会うこともないであろうゼロに、“エックス”は心の中でそう告げていた。
 ハルピュイアは“エックス”の肩を抱いて囁く。
「参りましょう、“エックス”様」
『うん』
 肩越しにハルピュイアを見上げた“エックス”の表情に陰りはなかった。
「そろそろ行こうぜえ〜」
 待ちくたびれたのか、催促するファーブニルの声が聞こえてくる。
 “エックス”とハルピュイアは顔を見合わせて笑うと、ファーブニルたちのところへと戻ってくる。
『ごめんね、待たせちゃって』
 “エックス”が申し訳なさそうに謝ると、ファーブニルは少々バツが悪そうな表情をしてかりこりと頬をかく。
「あ…す、すんません。オレそんなつもりじゃ……」
『いいんだよ。待たせたのは事実なんだし』
「別に気にしてませんわ。ね、ファントム?」
 ひょいと片手を上げたレヴィアタンが隣にいるファントムに視線を移すと、ファントムは無言で頷いた。
「“エックス”様。それでは我々は参ります」
 ハルピュイアが“エックス”に一礼して告げる。
 “エックス”も静かに頷いた。
 ハルピュイア、レヴィアタン、ファーブニルの三人は、“エックス”の意志を継いで、人間とレプリロイドを守るために戦う旅を続けている。
 レプリロイドが存在する限り、イレギュラーはどこかで発生する。
 長い、長い、終わりなき旅路。
 だが、彼らは幸せだった。
 ネオ・アルカディアの幹部という身分を失い、放浪の身となった四天王。
 最後に残ったのは絆。
 恋人や友達以上の絆で結ばれた仲間、愛すべき家族。
 誰もが望んで得がたいものを持っているのだから。
『頑張ってね』
 “エックス”が無事を祈るように両手を胸の前で組む。
『お主らには“エックス”様の加護がある』
 ファントムは“エックス”の傍に控えながら、ハルピュイアたちに言った。
「はい」
「お任せあれ♪」
「おう!」
 短い言葉だが、お互いの気持ちは十分すぎるほど伝わった。
 “エックス”とファントムの姿が消えて、サイバー空間に戻っていった。
 魂だけの存在である二人は、現実空間には長い時間存在することができなかったからである。
 “エックス”とファントムが去った後、レヴィアタンは腰に手を当てて、ハルピュイアを見る。
「ふっふーん。しっかり聞こえてたのよ。よくあんな恥ずかしい台詞言えるわよね」
「悪趣味だな」
 ハルピュイアが顔をしかめると、レヴィアタンはふんと笑う。
「別に“エックス”様と会えるのはこれっきりってわけじゃないでしょ。私たちはいつか死んでサイバー空間に行くのよ。そのときはずっと“エックス”様と一緒にいられるわけだし、好きなだけ甘えればいいのよ。ねえ、キザ坊や」
「でもよ、それってなーんか素直に喜べねえよな…」
 呑気に言うファーブニルの言葉に、ハルピュイアの口元が微かにほころぶ。
「さぁて…じゃあ、オレらも出発すっかぁ」
 そう言って、率先して歩き始めたファーブニルは拳を突き上げる。
「行くぞ。イレギュラーが待ってるぜ」


[ END ]


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Thank you for reading♪(^^)


ロクゼロ4における『シエルエンディング』みたいな感じで書きました。
スタッフロールの後、ゼロの頭部の残骸らしきCGがありますが、そこからできた話です。
ちなみにゼロの人間姿は想像にお任せするという形で、特徴もあえて詳しく書きませんでした。

なんだかオリジナルエックス様が某恋愛ゲームの弁財天様、
もっと言えば、便利なお助け万能キャラになってるますね(苦笑)。
気象を操ることができるハルピュイアたち四天王の力は本来エックスの力なのだから、
万能だったらこれぐらい朝飯前かなと…(^^;)。

でも……ゼロの今後は主夫決定ですね。
もしくは完全にシエルさんのヒモ。別名『ゼロ主夫エンディング』(笑)。


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